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極悪女王、なぜか泣けた

芸人のゆりあんレトリーバーさんが主演のネットフリックス、良かった。見る前には想像もしてなかったけど、このドラマを見て、感動して泣けてしまった。

なんで泣けたんだろう?と考えても、全然わからんのよね。でも、感動して泣けたんよな…。

極悪女王について

https://www.youtube.com/watch?v=fkYPV3GPRK4&pp=ygUM5qW15oKq5aWz546L

https://www.netflix.com/jp/title/81351263

極悪女王の感想

泣けたんだけど、泣けた理由を考えても全然ピンとこない。ピンとこないなら、何が印象に残ったのかってことを列挙してみれば何かわかるかもってことで列挙してみるとこんな感じ。

悪の下の弱さ

主役はダンプ松本。女子プロレスが一大ブームになったときの悪役のボス。当時の試合こそ見たことはないけど、なんとなくは知っている。

そんなダンプ松本さんに焦点を当てている。

ただ、知っている。ダンプさんが実は良い人で、本当はベイビーフェイス、いわゆるいいもの役をやりたかったが、その道はライオネル飛鳥と長与千種が居たので叶わなかった。残された道が悪役だったみたいな。そういう背景があることはなんとなく知っている。

その悪役になってから終わりまでを丁寧に、当時の複雑な心境を交えながらドラマ化している。

陰の主役 唐田えりか

このドラマの主役はダンプ松本であり、それを演じるゆりあんレトリーバーなんだけど、主役を輝かせる相手役として長与千種が描かれている。演じるは唐田エリカさん。世間的には東出の…って感じかもしれないが、僕的にはバックナンバーの「ハッピーエンド」のPVに出てくるかわいい女性。

https://www.youtube.com/watch?v=T8y_RsF4TSw

その長与千種が実は主役なのでは?と感じるような熱演。長与千種のあの熱演がなければ、このドラマは成立していない。

不思議なもので、プロレスの世界で”いいもの”が輝くには対局の悪の存在が非常に重要なんだけど、このドラマは悪の対局のベイビーフェイスに光をあてまくることで、ダンプ松本という人間の陰までもが見える。

本気を感じるプロレスシーン

長与千種とダンプ松本こと松本香。

同期入団で、同じ寮で過ごし、同じ青春を過ごした仲間であり親友。そんなところから描かれながらドラマは始まっていく。当時の女子プロレスはビューティーペアが大人気で、次のスターを夢見て多くの練習生が集まり、その夢見る練習生の中から頭一つ抜け出したのが、ライオネル飛鳥と長与千種のクラッシュギャルズ。

その活躍ぶりを見守る松本香。一緒に練習していたけどどんどん置いていかれる。また孤独になるのかな…?そんな不安を抱えながら同期がスターになるのを見守る日々。

しかし、あることをキッカケに松本香が闇落ち。周囲がドンびくぐらいの闇落ちは、ダンプ松本の持つ天性の千両役者ぶりを開花させ、ファンのみならず世の中を巻き込むムーブメントを起こす。

世間から憎みに憎まれる悪役と、それを倒してくれ!と言わんばかりに声援を浴びるクラッシュギャルズは、世間から大注目を浴びる中でいくども直接対決することになる。

その名試合の1つと言えるのが大阪城ホールで行われた髪切りデスマッチ。

これがすさまじかった。

プロレスは八百長(ブック)

プロレス物の作品でこれを描くのか…とシリーズ冒頭からずっと密かに感心していたのが、ブックがあるという前提で描かれているということ。つまりは八百長。結果は裏で決まっているということなんだけど、当時の女子プロでは当然に行われてましたって感じで描かれている。

(おそらく男子プロレスもだろうけど…)

個人的には以前ほどブックに抵抗はないというか、勝ち負けが決まっているから選手を守れている部分があると好意的に見ている。

ブックによってドラマを作って試合を盛り上げて客を呼ぶことができる。それはつまり選手が過度に盛り上げを考えなくていいってことでもあるし、結果が決まっているから本気で相手を痛めつけなくても良い。だから怪我を未然に防げる。だから年間を通して試合を継続できる。

なによりも結果をあらかじめ決めていることで選手のプライドを守ることができる。負けるようにと言われたから仕方がなかったとして負けた事への精神的ダメージを誰かの責任に転嫁することができる。そうやってブックによって選手を守っている部分があると思っている。

髪切りデスマッチも当然ながらブックは決まっていた。そのブック破りをダンプ松本はやってのける。

それが事実なのかどうかはわからない。わからないが、ブック破りによって、髪切りデスマッチで髪を切らざるを得なくなったのは、想定していなかった人物。このシーンがなぜか泣けるし、そして、ここまでやれるのか…と寒気もするようなシーン。

これドラマよな?これ演技よな?と。

不器用な演技が逆によかった

見始めたころは、ゆりあんがあまりにもの大根演技で不安で仕方なかった。この演技力で5話持つのか?これ最後まで見れないかもしれないぞ…そんな不安を持ちながら見始めた。

それが話が進むにつれて印象が変わる。

大根演技に感じていた部分がダンプの不器用さや純朴さにも見え、話を進めるにつれて演技力がついたためか、大根演技が前振りとなり、悪役ダンプのゆりあんには本物さながらの迫力を感じるようになっていた。

髪切りデスマッチでも、もう本気でやってますよね?と。 引退試合も、本気でそう思って言ってますよね?と。

これ、ちょっとでも演技の素養がある人物が主役を演じていたら、逆に違和感を感じたかもしれない。

結果オーライなのかもしれないけど、ゆりあん主役抜擢は大正解だし、ゆりあんだからこそ泣けた。

そんなわけで…

ダンプ松本という稀代のヒール、その正体でもある純粋な女子プロ好きな女の子松本香を描いた物語は、5話の話の中にシッカリと描かれていたと思う。

思えば、ゆりあんレトリーバーも、とても純粋そうでありながら、芸人としてステージに立つときには誰よりもぶっ飛んだ発想の芸ができる。

2人は立つ舞台も時代も違うけど、パーソナリティとして似ている部分があるのかもしれない。

 

そういえば以前、酒向芳という怪物的俳優さんが役作りについてこんなことを言っていた。

「役を作るとき、僕は自分の内側にあるその部分を引き出している」

イヤな役を演じる時には、自分の中にあるその嫌な部分を引き出すようにする。外から内へと憑依させるのではなく、内側から召喚するといった感じかな。自分の中にあると感じる役どころだからやれているとも言っていた。

もしかしたら、ゆりあんもそうなのかもしれない。ダンプ松本を演じているけど、それはゆりあんの中にダンプ松本さんと同じ何かがあるから、それを引っ張り出せたのかもしれない。

だから、画面を通しても伝わるものがあるんじゃないか?どれだけ凶暴なダンプを演じても、内側からにじみ出る悲しみまで表現できたのではないか。そんな風にも思った。

 

このドラマを見てから、youtubeでいくつかの女子プロ関連の動画を見た。当時の本物の髪切りデスマッチもダンプ松本引退試合も見た。殺伐としている試合でしかなかった。けど、妙に泣けた。

ダンプ松本引退試合の本当のラストマッチ、これがずっとやりたかったプロレスなんだな…と思うと、精神的に限界だったんだろうな…。でも最後の最後までその辛さは見せずに終わった本当に強いレスラーだったんだなと思う。

ダンプさん、かっこいい。

そう思える熱くて素敵な作品でした。おすすめです。