速読が良いのか精読(遅読)が良いのか

勉強

読書をする上で一つのジャンルを深堀するべきか、幅広く読むべきかで迷いがあったので、先日それを調べてみた。

結論として、読む目的で変えるべきだよ、得られる効果が違うからねってことが分かった。

では、そのうえで、1冊1冊の読書スピードはどうなのか。早く読むほうが良いのか、ジックリ読むほうが良いのか、そこに答えは出ているのか?ということで調べてみた。

分かったことは「読むスタイルで変わるよ」という、深堀か幅広くかで調べたことと同じ結論に至った。

ジックリ読むか、スピード重視で読むかの調査メモ

チャットGPTさんに聞いて返ってきた回答。これをガイドラインにしつつ、参考にできそうな論文などを調べてみた。

比較項目 じっくり時間をかけて1冊読む(1か月に1冊) スピード重視で1冊読む(1週に1冊)
読書ペース ゆっくりとしたペースでじっくり読む 速いペースで短期間に読む
理解度 高い。内容を深く理解し、細部まで把握しやすい 中程度。全体の流れは掴めるが細部の理解は浅くなる可能性
記憶定着 良好。情報が長期記憶に定着しやすい やや低め。情報が短期記憶に留まりやすい
分析・考察の時間 十分。内容に対する分析や考察を深める時間が取れる 限られる。表面的な理解に留まりがち
読書の楽しみ 高い。物語や論理の展開をゆっくり楽しめる 限られる。急いで読むため、細かい楽しみを見逃す可能性
読書習慣の形成 継続的な習慣化がしやすい。毎月新しい本に挑戦できる 週間ごとのリズムで習慣化しやすいが、疲れやすい場合も
時間の投資 多くの時間を一冊に集中して投資する 少ない時間で多くの本を読み切る
選書の自由度 選んだ本に集中できるため、一貫性のあるテーマを追求しやすい 多様なジャンルやテーマの本を短期間で読みやすい
ストレスの感じ方 ゆったりとしたペースなのでストレスが少ない 速いペースで読むため、プレッシャーやストレスを感じやすい
総読書数 年間12冊程度 年間52冊以上
実生活への応用 深い理解に基づき、実生活や仕事に具体的に応用しやすい 表面的な理解に留まるため、応用には工夫が必要
読書の目的に応じた適性 知識の深堀りや自己成長を目的とする場合に適している 幅広い知識の習得や多様な情報に触れることを目的とする場合に適している

じっくり時間をかけて1冊読む(1か月に1冊)

メリット:

  • 深い理解と記憶定着が期待できる。
  • 内容に対する深い考察や分析が可能。
  • 読書自体をじっくり楽しむことができる。
  • 特定のテーマやジャンルに集中しやすい。

デメリット:

  • 年間の読書数が少なくなる。
  • 読み終えるまでに時間がかかるため、他の本とのタイミング調整が難しい場合がある。

スピード重視で1冊読む(1週に1冊)

メリット:

  • 年間の読書数が多く、多様なジャンルやテーマに触れやすい。
  • 読書の習慣化がしやすく、短期間で達成感を得やすい。
  • 短時間で多くの情報を吸収できるため、幅広い知識を迅速に獲得できる。

デメリット:

  • 深い理解や記憶定着が難しくなる可能性がある。
  • 読むペースが速いため、ストレスを感じやすい。
  • 内容の詳細を見落としやすく、実生活への応用が難しい場合がある。

論文

論文タイトル 著者 出版年 概要 リンク
精読 速読 日本読書学会 2019年 精読と速読の手法を比較し、それぞれの効果を検証しています。精読ではタイトルから内容を予測し、語彙や表現の確認、段落読み、内容確認の順に進める方法を採用しました。一方、速読では辞書を使わずに1,000字から2,000字の新聞記事を5分以内で黙読する方法を用いています。 リンク
現代文授業における多読 井上 次夫 2010年 高等専門学校2年生を対象とした現代文の授業において、多読(速読)の手法を取り入れた実践について報告しています。多読は、読書速度を向上させ、文章読解力や読書意欲の向上に寄与するとされています。具体的な授業の取り組みやその効果について詳しく述べられています。 リンク
複数の読書量推定指標と語彙力・文章理解力との関係 日本教育心理学会 2015年 読書量が語彙力および文章理解力に与える影響を検証しています。読書が語彙力および文章理解力に促進的効果を持つことは直観的に予測されてきましたが、実証的な検討が行われています。 リンク
速読は有益か 日本読書学会 2015年 速読に対するニーズの調査や、速読の有効性について検討されています。速読に関するさまざまな視点からの分析が行われています。 リンク

「精読 速読」(日本読書学会、『読書科学』第22巻第1号、2019年)

項目 精読 速読
定義 タイトルから内容を予測し、語彙や表現の確認、段落ごとの読み、内容確認を丁寧に行う読み方。 辞書を使わずに短時間で文章を読み、主要な情報や要点を迅速に把握する読み方。
目的 新しい語彙や表現を習得し、内容を深く理解する。 情報を短時間で効率よく処理し、全体の概要を把握する。
プロセス ・ 語彙と表現を確認する。
・ 段落単位で意味を理解する。
・ 全体の内容をしっかり確認する。
・辞書を使わない。
・1,000~2,000字の記事を5分以内で黙読。
・要点を考慮しながら読む。
利点 ・ 語彙力が増える。
・ 新しい表現を確実に習得。
・ 内容を深く理解できる。
・大量の情報を短時間で処理可能。
・読解速度が向上。
・実用的な情報処理能力を高める。
欠点 ・ 時間がかかる。
・ 大量の情報を効率よく読むのには不向き。
・詳細な情報やニュアンスを見落とす可能性がある。
・理解が浅くなることがある。
適用シチュエーション 新しい言葉や難解な内容を深く理解したいとき。 主要な情報を短時間で把握し、全体の概要を知りたいとき。
学習者の評価 語彙力向上に役立つと評価された。 速読に対する有効性が確認され、速読の基礎練習の強化を望む意見があった。
  • 実践を通じて、速読と精読はそれぞれ異なる目的に役立つと結論付けています。
    • 精読: 語彙力の向上と新しい表現の習得に有効。
    • 速読: 短時間で多くの情報を処理し、効率的な読解能力を高める。
  • 学習者にとって語彙学習の重要性が課題として浮かび上がりました。また、精読と速読を組み合わせる授業の実践が、学習者の読解力向上に役立つ可能性を示唆しています。
  • 統計データのさらなる収集が必要であり、語彙学習の指導方法に改善の余地があると結論付けられました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jlem/22/1/22_KJ00009846938/_pdf/-char/ja
渋谷きみ子「中上級の読解指導 ― 精読から速読へ ―」『日本語教育方法研究会誌』第22巻第1号(2014年):74-75。

「現代文授業における多読」(『小山工業高等専門学校研究紀要』第40号、2010年)

項目 多読(速読) 精読
定義 数多くの文章を速いペースで読むことを目的とし、全体の内容を把握する読み方。 文章を細かく丁寧に読み、深い内容理解を目指す読み方。
目的 読書速度を上げる、文章全体の要点を把握する、読書意欲を高める。 細部まで正確に理解する、文章の内容や意図を深く把握する。
教材 学習者が選んだ易しい文章や、教科書内の複数の教材。 教師が選んだ教材、難解な文章や深い内容のもの。
速度 速く読むことを重視(全体を素早く把握)。 ゆっくり読むことを重視(詳細な部分まで理解)。
分量 多くの文章を読む(幅広いテーマに触れる)。 少ない文章を読む(テーマを深く掘り下げる)。
利点 ・ 読解スピードが向上する。
・  読書に対する興味・意欲が高まる。
・  多くの情報を得られる。
・ 内容理解が深まる。
・ 詳細な知識や考え方を学べる。
・ 問題解決能力が向上する。
欠点 ・ 内容の理解が浅くなる場合がある。
・ 学習者の負担が増えることがある。
・ 時間がかかる。
・ 情報量が限られる。

最後の結論

  • 結論: 多読(速読)と精読のどちらか一方だけでは不十分であり、両者を効果的に組み合わせた授業が必要である。多読は読書速度や意欲を高める一方、精読は内容理解を深めるために重要である。
  • 提言: 多読では適切な教材の選定が不可欠であり、精読とのバランスを取ることで、学習者の能力向上に寄与する。具体的な教材選択や授業展開の工夫が今後の課題である。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oyama/40/0/40_1/_pdf/-char/ja

井上次夫.「現代文授業における多読 ― 教科書教材を生かす ―」『小山工業高等専門学校研究紀要』第40号(2008年):1-12。

「複数の読書量推定指標と語彙力・文章理解力との関係」(日本教育心理学会、『教育心理学研究』第63巻第3号、2015年)

項目 速読 精読
定義 多くの文章を短時間で読むことを目的とし、全体の要点を把握する手法。 文章を丁寧に読み、詳細な理解と語彙の習得を目指す手法。
目的 読解速度を向上させ、情報処理を効率化する。 内容を深く理解し、新しい語彙を学習する。
効果 読書量の増加が語彙力や文章理解力の向上に貢献する。 語彙力と文章理解力の相互促進的な関係を強化する。
利点 要点の迅速な把握
短時間で多くの情報を得る
内容を深く理解
新しい語彙や概念の習得
欠点 理解が浅くなる場合がある。 時間がかかり、多くの情報を処理するのに不向き。
適用シチュエーション 概要把握や短時間での情報収集が求められる場合。 詳細な内容や新しい概念を学習する必要がある場合。

速読と精読がそれぞれ異なる目的と役割を持つことを示しており、両者のバランスが重要であると結論付けている。

速読は短時間での情報収集に有効であり、精読は語彙力や文章理解力を深めるために不可欠です。特に日本の小学生における読書量、語彙力、文章理解力の相関関係を明らかにすることで、教育現場での具体的な読書指導の改善に役立つ知見を提供している。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/63/3/63_254/_pdf/-char/ja

猪原敬介、上田紋佳、塩谷京子、小山内秀和「複数の読書量推定指標と語彙力・文章理解力との関係 ―日本人小学校児童への横断的調査による検討―」『教育心理学研究』第63巻第3号(2015年):254-266。

「速読は有益か」(日本読書学会、『読書科学』第56巻第3-4号、2015年)

項目 速読 精読
定義 短時間で文章全体の要点を把握するために読む手法。 文章を丁寧に読み、内容を深く理解し、記憶に残すことを目的とした読み方。
目的 情報処理の効率化、仕事や学習で必要な情報を迅速に収集。 詳細な理解、新しい知識や概念を深く学習するために有効。
効果 全体の要点把握が迅速になり、より多くの情報を短時間で処理可能。 語彙や内容の深い理解、記憶の強化に役立つ。
欠点 理解が浅くなる場合がある。 時間がかかり、多くの情報を処理するのには不向き。
適用シチュエーション 新聞、業務文書、実用書のように必要な情報が明確でスピーディに処理したい場合。 学術書や小説のように細部の理解や記憶が求められる場合。

最後の結論

  • 速読と精読にはそれぞれ明確な利点と用途があるため、読む対象や目的に応じて適切に使い分けることが重要である。
  • 本研究では、速読のスキルが特に実用書や業務文書など「効率化」を求められる対象で有益であると示された。一方で、精読は学術的な内容や新しい知識の学習において重要性が高い。
  • 速読スキルの習得を目指す際は、読書の種類や目的に応じた訓練方法が必要であると結論付けられている。
速読は有益か
J-STAGE

森田愛子.「速読は有益か ― 速読に対するニーズの調査 ―」『読書科学』第56巻第3・4号(2015年):113–123。

速読か遅読かを調べて思ったこと

目的で読み方は変わる

  • ジックリと時間をかけて読むことで、深く理解し、語彙力を得て…などの効果がある
  • サクッと読むことで大量の情報を得ることができる

そのことから、どのような目的で読むのか、何を読むのかでスタンスや読み方を変える工夫が必要になる。やはりなぜ読書をするのかという目的を明確に持つことがとても大切。

どうしていく

”幅広く+速読”で読む本と”深堀+精読”で読む本を分けて読書をすることが大切。
2ライン読書とでも名付けたほうが良いのかな…。

そして、計画を建てて、”何を読むのか”を厳選することが時間を無駄にしないために非常に重要だとも言える。

多読だからといって無差別に何を読んでも良いというわけでもなく、多読こそ厳選することが大切だとする論文もあったので、読書計画を構築することを意識していきたい。

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